久しぶりに面白い本を読んだ。
読み始めたきっかけとしてはただ面白そうという理由のみで手に取った。実際、後から思い返してみると、そんなふうにして出会った本の方が当たりが多い。
話題だから、人に薦められた、教養として読んだ、勉強の為に、みたいなきっかけで読んでも確かにいいんだけど、それとの決定的な違いは読み進めるスピードが段違いに速いということ。
600ページ近いボリュームだったが、3日で読み終えた。(いや遅いとかいうつっこみはなし。こっちは仕事してんだ。あ?)
とにかく、貪るように一気に読み終えた。
この先ネタバレしての感想だから、未読の方は読まないでね。
感想
天才VS火星
この小説、数年前に映画化もされている。タイトルはオデッセイ。
映画はまた別で感想書いております。
こういうのは、原作を先に手つけるのが僕の定石。関係ないか。この話。
あらすじはざっくり、
有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが――。奇跡的にマークは生きていた!? 不毛の赤い惑星に一人残された彼は限られた物資、自らの知識を駆使して生き延びていく。宇宙開発新時代の傑作ハードSF。 引用:本書
物語としては、あらすじにもあるように、たった一人、火星に取り残されたマーク・ワトニーの奮闘記。そこから生き残りをかけての孤独の戦いの記録だ。
描写は、ワトニーの1ソル単位のログエントリーの形式で語られる。(火星での1日=1ソル〔24時間39分3秒])
考えてみてもほしい。凡人なら火星に取り残された時点で死んだも同然だ。(まあ凡人は火星に行かないが。)
満喫のない駅で終電を逃しただけで失意に陥るのに、それが火星。どれほど絶望感に襲われるのか見当もつかない。「迎えにきて」が通用しない。火星だと迎えに行くのに下手すりゃ数年だから。
そんな困難な状況下でも、次の火星探査機(アレス4)が4年後の3200km離れた地点に到着することを希望に生存をかけての計画を練る。
果てしない4年後という月日。それに加えて、どうやってそこまで辿り着くの?それまでの食糧は?そもそもどうやって地球と連絡とるの?と問題だらけ。
山積みの問題の中、ワトニーは、自分の持てる最大限の知識を発揮して、僅かな希望を手繰り寄せていく。
植物学者としての立場の活かしながらも、到底思いもつかないような発想で生き延びる術を模索。
僕みたいな無能ならすぐさま食料を食い尽くして、あえなく死んでいくのだ。
そんな凡人の僕にとって、ワトニーが生み出すアイディア、NASAの天才集団らの凄まじい努力は、まさにこっちまで頭が良くなった錯覚に陥らせてくれるほどに爽快だ。
突拍子もないことは起きない。
SF小説と謳いながらも妙に現実味を帯びている。というのも科学的考証が成されている、実際に可能な技術を駆使して創意工夫を図っている。
作者のアンディー・ウェラーは、
「たとえ僕の目論見がマークを苦しめることだったとしても、およそありそうにない悲惨な偶然がつぎつぎと主人公の身に降りかかるようにはしたくない。
~中略~
彼は想定を超えて長期にわたり使用された機材の故障でひどい目にあうかもしれない。でも、稲妻に打たれ、そのあとに隕石の直撃をくらってはならないのだ。」
と語っている。火星でのトラブルは起こるべくして起こっているのだ。
そのことが物語をより一層を迫真的にさせている。
想像できない問題
少々厄介なのが、出てくる用語が小難しいということ。
宇宙関連の専門用語の多さ、ローバーやハブの内部の描写が複雑(この点は僕の読解力不足も否めない)な故に、うまく想像できない箇所もところどころあった。言葉で説明されてもわからんしと思うところもあったわけです。
まあ、その点はそのうち映画を鑑賞して、映像として後から補うことにしよう。
ちなみに主演はマットデーモン。ボーンシリーズおもろいよね。いずれはこっちも観返したい。
結局、総括すると
とにかくおもろい
それに尽きる。
前述のログエントリー形式の切り口とともに、地球側(NASA視点)の軸でも物語が進んでいく。交互に描かれるこの構成に、早くワトニーのログを読みたい気持ちが先行し、読み手を一向に一息つかせてくれない。続きが気になりすぎて読むスピードが速まってしまう。
良い意味で一段落しないため、テンポよく一気に読める。
単純に止まらないほど面白いのだ。
是非ご賞味あれ。
おしまい。
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