おすすめされがちな「旅のラゴス」を読んで感じた変化を追及する姿勢【感想】

  • 2019.02.02
  • 2020.04.12
  • 読書
おすすめされがちな「旅のラゴス」を読んで感じた変化を追及する姿勢【感想】

小説 おすすめ」 と検索すると、キュレーションサイトなどでやたら目につくこの本。

初版が発行されたのは1986年にもかかわらず、近年再びの注目を浴びてロングセラーの名作となっているようです。
筒井康隆の本は他に読んだこともなく、事前知識は皆無であり、まっさらな気持ちで読んでみました。

そんな「旅のラゴス」の感想あるいは書評的なものをつらつら、だらだらとネタバレてんこ盛りで語っていきます。

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はじめに

タイトルから想像するに言わずもがな「旅系小説」だということは想像に難くなかったが、SF要素の入ったファンタジー小説でもあった。

しかし、転移(いわゆるループ)や壁抜けなどのSF要素はあるものの、それは小説に花を添えてくれるおまけ程度のものであり、本質は旅
突拍子もない異次元みたいな使い方はされませぬ。

さらに、背表紙のあらすじから思いっきりネタバレが入っているように、SF小説にしては取り立てて、仰天するような大きなストーリー展開もなく、主人公ラゴスの半生を淡々と、追体験できる形で綴られていく。

僅か250ページの中に半世紀の時の経過が凝縮されて、異世界の地に足をを踏み入れたかのような感覚にさせてくれる。

それはまさに、ロードムービー映画をみせてくれるかのようだ。

壮大なスケールの世界観、雰囲気を楽しみ、そしてロマンを味わうことを主としていただきたい。

「-ああ、面白かったあ~」

そんな一言の感想で片付けてしまうこともできるだろう。

しかし、ここに感想を書くのにに至ったのは、その不思議な読後感

何かが疼く。もどかしい。なんだろうか。

なんというか自分を奮い立たせてくれるような高揚感に包まれた。

純粋に旅行欲を掻き立ててくれるだけに留まらず、個人的に感じたこの小説に巡らされたメッセージ性を汲みとっていきたい。

フィクションの異世界でありながら、非常に現実的

小説の世界観

現実的というのは、救いのない残酷な運命も普通に描かれているということ。

ハッピーで愉快な楽しい小説の世界かと思いきや、荒々しい過酷な世界で、死も身近に感じる。というか、ばんばん人が死んでいく。
その死や過酷な状況かも淡々と描かれているため、読み手としてもそれを粛々と受け入れるといった感じ。

人物の魅力

主人公ラゴスの人物像については、巻末解説の言葉を借りると、次のように語られている。

主人公の「おれ」は、いつものように、多少シニカルで醒めたキャラクター与えられているとは言え、まことに常識的、あるいは良識的な倫理観に基づいて行動し、その影響を周囲にも及ぼし、あるいはそれを貫き、磨こうとしているように描かれているし、その点では、他の人物たちも多かれ少なかれ同様である。「おれ」は常に節操高く、思慮深く、誰が見ても「好ましい」人物として描かれる。

また主人公以外の、人物たちにもそれぞれ芯があり、行動信念がある。

これもまた解説の言葉を借りれば、

ここで描かれている人物たちが、行動の根拠としているのは、あるいは人生において磨こうとしているのは、きわめて普遍的かつ常識的な価値観であり、常識的な合理性である。

そんな人物たちの各々に感情移入して、その人の視点から物語に想像を巡らせ、思いを馳せるのもまた、楽しみのひとつかと思う。

何故、旅をするのか?ラゴスの旅への姿勢から感じ取ったもの

ラゴスの旅の目的が明確に書かれてはいない。

答えめいたもの、解釈的なものは、読者へと委ねられている。

そもそも、僕自身の場合、「何故旅をするのか?」を考えたときに、それは何かに期待にしているのではないだろうか。

見たこともない何かを求めて、何もない退屈な日常から何かあるであろう未開の場所へ動こうとする。

なんか面白いことないかな~という気持ち。そんな気持ちを原動力に人は旅をすることもある。

ラゴスの場合はどうだろうか。単に自分の好奇心に忠実に旅を続けたのでないだろうか。

それを実感するシーンがいくつかある。

ラウラの「銀鉱に戻って一緒に生活しよう」という提案。

・ニキタとカカラニと結婚し、ポロの王として君臨。

故郷キテロで暮らす。

随所に見受けられた、人生の普及点ともいえるべきターニングポイントに悉く、甘んじずに旅を続けるを選択していく。

ラゴスは安息や安定を求めてたわけじゃない。変化を望んだのだ。

自分の中にある「留まっていたくない」という気持ちに正直に進む。そんな好奇心に従って、旅を続けていく、変化を求める生き様に、深い感銘と共感を受けずにはいられない。

俗に成功者と呼ばれるような人、例えば、堀江貴文であったり、落合陽一であったり、、その人達の共通項として行動力、自分をつき動かす何かがあったのことを思い出させてくれた。

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旅のラゴスを読んで感じたのは、それらの本で綴られているような、直接的で強いメッセージからでなく、旅という観点からのアプローチで「変化の恐れるな」との教訓だ。

 

その変化が、良い結果を生むか悪い結果を生むかは誰にもわからない。

「変化すること」、「自分の好奇心に素直であること」
それを推奨しているわけではない。しかし、後押ししてくれる。そんなことを感じた次第であります。

旅のラゴスを読み終えての感想、結論、あるいはまとめめいたもの

平凡なSFといってしまえばそれまでなのだが、そのSF要素はおまけみたいなもので本質はやはり過酷な旅を続けるその様子そのもの。

結果がどうあれ、自分の置かれた現状から、変化することを後押ししてくれる。

留まっていたくないことを肯定してくれる。

ラゴスの変化を恐れない勇敢な様子と自分の好奇心に嘘つかない行動力に勇気をもらえる。

変化、行動することを恐れない。

それこそが、この物語を通して、僕が教訓として受け取ったメッセージであったのだ。

 

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